薬物事件の弁護を徹底解説

薬物事件の弁護を徹底解説|覚醒剤・大麻・麻薬の罰則と執行猶予獲得

薬物事件は、他の刑事事件と比較して特殊な性質を持っています。被害者が存在せず示談交渉という選択肢がない一方で、証拠が尿検査・押収物という客観的なものに限定されることが多く、弁護の戦略が他の事件とは根本的に異なります。また、依存症という医療的側面を持つため、単に法律的に弁護するだけでなく、治療プログラムとの連携が弁護活動の中核を担います。

日本では薬物に対する取締りが厳格で、初犯であっても懲役刑が求刑されるのが通常です。ただし、初犯で自己使用目的の所持・使用であれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が十分あります。執行猶予とは「懲役○年、執行を猶予する」という判決で、執行猶予期間中に再犯がなければ懲役刑が実際には執行されないという制度です。

また、令和5年(2023年)12月には大麻取締法が大幅改正され、従来は規制されていなかった「大麻の使用」に対して新たに刑事罰が創設されました。この改正は薬物事件の実務に大きな影響を与えています。

この記事では、主要な薬物の種類と法律、行為態様(所持・使用・密売・製造)ごとの罰則比較、逮捕後の手続きと証拠の扱い、初犯・再犯別の量刑相場、執行猶予獲得の戦略、依存症治療との関係まで、実務の観点から徹底解説します。

薬物の種類と適用される法律

薬物の種類と適用法律

日本では薬物の種類に応じて適用される法律が異なり、それぞれ罰則の内容・重さも異なります。まず主要な薬物と適用法律の全体像を把握しましょう。

覚醒剤(覚醒剤取締法)

覚醒剤はメタンフェタミン・アンフェタミンが主成分で、日本では最も取締りが厳しい薬物の一つです。覚醒剤取締法により規制されています。

主な罰則

行為 罰則
所持・使用 10年以下の懲役
所持・使用(営利目的) 1年以上の有期懲役+500万円以下罰金
譲渡・譲受 10年以下の懲役
譲渡・譲受(営利目的) 1年以上の有期懲役
製造 1年以上10年以下の懲役
輸出入 1年以上10年以下の懲役(営利目的:無期または3年以上)

覚醒剤は使用した場合でも刑事処分の対象になります(覚醒剤取締法41条の3)。尿検査で陽性反応が出れば「使用」の証拠になります。

大麻(大麻草の取扱いに関する法律)

大麻は令和5年(2023年)12月に大麻取締法が大幅改正され、同時に「大麻草の取扱いに関する法律」が新設されました。この改正の最大のポイントは、従来は刑事罰の対象外だった「大麻の使用」が新たに処罰対象になったことです。

主な罰則(改正後)

行為 罰則
所持 7年以下の懲役
所持(営利目的) 10年以下の懲役+300万円以下罰金
使用 7年以下の懲役(新設)
栽培 7年以下の懲役
譲渡・譲受 7年以下の懲役
輸出入 7年以下の懲役(営利目的:10年以下+300万円以下)

改正前後の変化

改正前は「使用」罪が存在せず、所持が発見されなければ処罰できないという点が問題視されていました。改正後は覚醒剤と同様に使用も処罰対象となり、尿検査での陽性反応が証拠になります。

また、従来「大麻の成分から製造された医薬品(CBD含有製品)」の一部が規制されていましたが、改正により医療用大麻由来製品の適切な使用は規制から外れるようになりました(日本でも大麻草由来の医薬品の使用が一部可能に)。

麻薬(麻薬及び向精神薬取締法)

MDMA・コカイン・ヘロイン・LSD・ケタミン等が麻薬として規制されています。

主な罰則

行為 罰則
所持・使用 7年以下の懲役
所持・使用(営利目的) 1年以上10年以下の懲役+200万円以下罰金
輸出入 1年以上10年以下の懲役
輸出入(営利目的) 無期または3年以上の懲役

向精神薬(麻薬及び向精神薬取締法)

睡眠薬・抗不安薬・覚せい剤原料等が含まれます。医師の処方なしに所持・使用することが規制されています。

主な罰則

行為 罰則
所持(不正) 3年以下の懲役
輸出入 5年以下の懲役

危険ドラッグ(医薬品医療機器等法)

「合法ハーブ」「お香」などと称して販売される指定薬物。医薬品医療機器等法(薬機法)で規制されています。

罰則

  • 所持・使用:3年以下の懲役または300万円以下の罰金

不正競争に関する特別法上の薬物

麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)では、薬物の密輸・密売に絡むマネーロンダリングが厳しく規制されています。

行為態様別の罰則比較と量刑相場

行為態様別の罰則と量刑相場

薬物事件の量刑は、「何の薬物か」「どんな行為か(所持・使用・密売・製造)」「営利目的かどうか」「初犯か再犯か」によって大きく異なります。実務上の量刑相場を行為態様別に解説します。

覚醒剤の量刑相場

所持・使用(初犯・自己使用・少量)

最も軽い類型。執行猶予付き判決が多く、懲役1〜2年、執行猶予3〜4年が相場です。反省・依存症治療・家族のサポートが整っていれば、執行猶予獲得の可能性は高い。

所持・使用(初犯・多量・自己使用の疑いがある程度超える)

懲役1〜3年。執行猶予付きの場合が多いが、量が多いほど実刑リスクが高まります。

所持(営利目的・密売関与)

初犯でも実刑になりやすい。懲役2〜7年が相場。組織的関与があれば10年以上になることも。

再犯(単純所持・使用)

執行猶予中の再犯は実刑確実。懲役1〜3年。累犯加重(刑法56条)が適用されると上限が引き上げられます。

再犯(営利目的・密売)

懲役5年以上。累犯加重が適用されると10年を超えることも。

大麻の量刑相場(改正後)

所持・使用(初犯・少量)

懲役4ヶ月〜1年、執行猶予3年が相場。覚醒剤より軽い傾向があります。

栽培(初犯)

懲役6ヶ月〜2年、執行猶予3〜5年が多い。栽培規模が大きい場合は実刑リスク。

輸入(密輸・営利目的)

初犯でも実刑になりやすい。懲役1〜5年程度。密輸に組織が関与している場合は大幅に重くなります。

MDMA・麻薬の量刑相場

所持・使用(初犯)

懲役6ヶ月〜2年、執行猶予3〜5年が相場。覚醒剤と大麻の中間程度。

輸入(密輸)

実刑率が高い。懲役2〜10年以上。密輸に絡む組織的犯罪では無期懲役も。

量刑に影響する加重・軽減要素

量刑が重くなる要素

要素 影響の程度
営利目的(販売・密売) 非常に大きい(実刑化が顕著)
多量所持(販売量を示唆) 大きい
組織的関与 非常に大きい
再犯・累犯 非常に大きい(累犯加重)
多種類の薬物 中程度
密輸・製造 非常に大きい

量刑が軽くなる要素

要素 影響の程度
初犯 非常に大きい
少量(自己使用分のみ) 大きい
早期の自白・反省 大きい
依存症治療の開始・継続 非常に大きい
家族のサポート体制 大きい
薬物関係者との絶縁 大きい
安定した就労・生活環境 中程度

逮捕後の手続きと証拠の扱い

逮捕後の手続きと証拠の扱い

薬物事件の逮捕後に何が起きるか、どの証拠がどう扱われるかを理解することは、弁護戦略を立てる上で不可欠です。

逮捕・捜索・差押えの流れ

薬物事件の逮捕は、次のいずれかのパターンが多い:

  1. 職務質問・所持品検査から発展:街頭や交通検問で職務質問を受け、所持品から薬物が発見される
  2. 内偵捜査・張り込みによる逮捕:警察が事前に内偵し、売買の現場や自宅・車を捜索
  3. 密売人の逮捕から芋づる式に:売人の逮捕をきっかけに購入者のリストが発覚
  4. 税関による摘発:郵便物・荷物・機内持ち込み手荷物の検査で発覚

逮捕と同時またはその後、自宅・車・スマートフォン・パソコン等の捜索・差押えが行われます。

尿検査(尿反応検査)の重要性

薬物使用を立証する最も重要な証拠が**尿検査(尿反応検査)**です。逮捕後または任意の採尿により、薬物代謝物の有無を検査します。

尿検査で検出できる期間の目安

薬物の種類 尿検査で検出できる期間
覚醒剤 使用後2〜5日程度
大麻 単回使用:1〜3日、常用者:30日以上
MDMA 使用後3〜4日程度
コカイン 使用後2〜4日程度
ヘロイン 使用後1〜3日程度

尿検査の陽性反応は「使用」の証拠となります。覚醒剤については最高裁の判例上、尿中の覚醒剤成分が証明されれば「使用」が推定されます。

毛髪検査

尿検査より長期間の使用歴を把握できます。頭髪では3〜6ヶ月分、場合によってはそれ以上の使用歴が判明することがあります。

供述調書の重要性と注意点

薬物事件では、逮捕後の取り調べで作成される供述調書が非常に重要な証拠になります。

注意すべき点

  • 「何月何日から使用していた」「どこで購入した」「誰から買った」という内容が詳細に調書化される
  • 調書は後の裁判で検察官の証拠として使われる
  • 自分に不利な内容の調書には署名しない権利がある(修正を求めることができる)
  • 弁護士が来る前に詳細を供述してしまうと、後で訂正することが難しくなる

黙秘権の行使

薬物事件では、証拠(尿検査・押収物)が客観的に存在することが多く、完全な否認が難しいケースがほとんどです。ただし、「どこで買ったか」「誰から買ったか」「いつから使用していたか」といった詳細については、弁護士と相談した上で慎重に供述することが重要です。

特に密売人(売人)の情報を供述すると、連座的に組織犯罪への関与を疑われるリスクがあります。「どこで買ったか」については弁護士の指示を受けてから供述することを勧めます。

押収物(薬物・器具)の扱い

薬物本体の鑑定

押収された薬物は、科学捜査研究所で成分・純度・重量の鑑定が行われます。鑑定結果は「鑑定書」として証拠になります。

営利目的の推定

以下のものが押収されると、「営利目的」の証拠として扱われる可能性があります:

  • 大量の薬物(自己使用量を大幅に超える)
  • 計量器・ビニール袋(小分け用)
  • 現金(多額)
  • 携帯電話の購入者リスト・メッセージ

デジタル証拠

スマートフォン・パソコンのデータも重要な証拠になります:

  • LINEやSNSのメッセージ(薬物購入・販売のやり取り)
  • 暗号資産(仮想通貨)の取引履歴
  • 電話帳(売人・購入者の連絡先)

デジタルデータは削除しても復元可能な場合があり、証拠として活用されます。

初犯・再犯の量刑と執行猶予獲得の条件

初犯・再犯の量刑と執行猶予獲得の条件

薬物事件で最も重要な弁護の目標は「執行猶予付き判決の獲得」です。初犯か再犯かによって戦略が全く異なります。

初犯の場合:執行猶予獲得が現実的

自己使用目的の覚醒剤所持・使用(初犯・少量)であれば、多くの場合、執行猶予付き判決が得られます。ただし「初犯だから大丈夫」と安易に考えることは禁物で、弁護活動によって執行猶予の付く確率と猶予期間が大きく変わります。

執行猶予を獲得するための必須要素

  1. 早期の自白と反省の態度

    否認を続けると「証拠があるにもかかわらず反省していない」という評価になり、実刑リスクが高まります。証拠が明白な場合は早期に認めた上で、反省の態度を示すことが有利です。ただし、冤罪の可能性がある場合は弁護士と相談した上で否認を続けることが正しい選択です。

  2. 依存症治療プログラムへの参加実績

    裁判所は「薬物依存症の治療を開始している」という事実を非常に高く評価します。公判前または公判中に、以下のいずれかのプログラムに参加していることが重要です:

    • DARC(薬物依存症リハビリ施設)への通所・入所
    • NA(ナルコティクス・アノニマス)への参加(12ステップ)
    • 精神科・心療内科での薬物依存治療
    • 断酒・断薬のミーティング参加
  3. 家族のサポート体制

    家族が「しっかり監督する」「再犯しないよう支援する」という体制を示すことが重要。具体的には:

    • 配偶者・親の監督書(情状証人として証言可能な旨を記載)
    • 安定した居住環境(家族と同居が有利)
    • 経済的支援体制(就労環境の確保)
  4. 薬物関係者との絶縁

    購入先・使用仲間との連絡を完全に断ち切り、その事実を客観的に示すことが重要。SNSアカウントの削除・携帯番号の変更・引越しなどの措置が有効です。

  5. 反省文・更生計画書の作成

    弁護士のサポートのもと、自己分析に基づく反省文と具体的な再発防止計画を作成します。「なぜ薬物に手を出したか」「どのように依存が進んだか」「今後どうやって薬物を断つか」を具体的に記述することが求められます。

再犯の場合:実刑回避の難しさ

執行猶予期間中の薬物事件再犯は、ほぼ確実に実刑判決になります(刑法25条の2)。執行猶予が取り消され、前回の猶予中の懲役刑と新たな懲役刑を合算して服役することになります。

累犯加重とは

「前に禁固以上の刑に処せられたことがある者が、その執行を終わった日から5年以内に再び罪を犯した場合、刑の長期の2倍以下の懲役または禁固」に処される(刑法56条)。

再犯でも争える余地

再犯の場合でも、以下の点について弁護活動が有効です:

  • 量刑の軽減(適正な量刑の主張)
  • 保釈の獲得(裁判中の身柄解放)
  • 刑の執行期間中の処遇改善
  • 「薬物依存症」という疾病の側面を強調した社会復帰支援

量刑の目安(初犯・再犯別)

薬物・行為 初犯の相場 再犯の相場
覚醒剤所持・使用(少量) 懲役1〜2年、執行猶予3〜5年 実刑1〜3年
覚醒剤所持・使用(多量) 懲役1〜3年(実刑リスク) 実刑2〜5年
覚醒剤所持(営利目的) 実刑2〜7年 実刑5年以上
大麻所持・使用(少量) 懲役4ヶ月〜1年、執行猶予3年 実刑6ヶ月〜2年
MDMA所持・使用 懲役6ヶ月〜2年、執行猶予3〜5年 実刑1〜3年

依存症治療プログラムと弁護活動の連携

依存症治療プログラムと弁護活動の連携

薬物事件の弁護において、依存症治療プログラムとの連携は戦略の核心です。「治療を始めているから再犯リスクが低い」という事実を裁判所に示すことが、執行猶予獲得の決め手になります。

薬物依存症という疾病の理解

薬物依存症は、「意志が弱い」「だらしない」という道徳的問題ではなく、脳の報酬系に働きかける疾病です。一度依存状態になると、意志の力だけでやめることは極めて困難であり、医療的・支援的介入が不可欠です。

この医療的観点を弁護活動に取り込み、「被告人は依存症という病気であり、治療を受けることで再犯リスクが大幅に低下する」と主張することが、情状弁護の重要な柱となります。

主な治療機関・プログラム

DARC(ダルク:Drug Addiction Rehabilitation Center)

薬物依存症者のための民間リハビリ施設。全国に多数の施設があります。

  • 入所プログラム:施設内で共同生活を送りながら回復を目指す(月10〜20万円程度)
  • 通所プログラム:自宅から通いながらミーティングに参加
  • 内容:NA(12ステップ)に基づいたグループミーティング、個別相談、生活支援

DARCへの通所・入所実績は、裁判所が最も高く評価する更生活動の一つです。公判前から参加することで、判決前から治療実績を積むことができます。

NA(ナルコティクス・アノニマス:Narcotics Anonymous)

薬物依存症者の自助グループ。12ステップのプログラムに基づいた回復を目指します。

  • 無料(会費なし)
  • 全国に多数の定期ミーティングがある
  • 匿名性が保たれている
  • 参加証明書を発行してもらえる場合がある

精神科・心療内科

  • 薬物依存症の医療的治療(薬物療法・認知行動療法)
  • 精神科医による診断書・意見書の作成(情状証拠として活用)
  • 「依存症の治療が必要な病状である」という医師の意見が、裁判所の判断に影響

SMARPP(スマープ:Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program)

認知行動療法に基づいた薬物再使用防止プログラム。多くの精神科病院・クリニックで実施されています。

ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)

薬物・アルコール問題の専門相談機関。相談・情報提供を行っています。

弁護活動と治療の連携

公判前段階(逮捕後〜起訴前)

弁護士が家族と連携し、治療機関への申し込み・通所手続きを進めます。勾留中(身柄拘束中)であっても、接見時に治療プログラムへの参加意向を確認し、釈放後すぐに開始できるよう準備します。

公判段階(起訴後〜判決前)

保釈または保釈なしの状態で、治療プログラムに実際に参加します。出廷時に参加証明書・精神科医の診断書を証拠として提出し、「治療を実際に受けている」ことを示します。

家族(配偶者・親)を情状証人として出廷させ、「一緒に治療に取り組む」という意思を示すことも有効です。

判決後(執行猶予の場合)

執行猶予判決が出た後も治療を継続することが、猶予期間を全うするための最重要事項です。再犯は実刑確実であり、治療の継続が最大の再犯防止策になります。

薬物事件で家族ができること

薬物事件は、本人だけでなく家族にとっても大きな試練です。同時に、家族の行動が判決に大きな影響を与えます。

すぐにすべきこと

  1. 弁護士への相談:逮捕直後に薬物事件の経験豊富な弁護士を探す。国選ではなく私選弁護人を強く推奨します(薬物事件は専門性が必要)

  2. 治療機関の調査:DARCの最寄り施設・NAのミーティング場所・対応可能な精神科クリニックを調べる

  3. 監督体制の整備:裁判所に対して「家族が監督する」ことを示すための準備(監督書・情状証人の準備)

  4. 生活環境の調整:薬物購入・使用の場所・人間関係から距離を置けるよう、引越し・転職・連絡先変更などを検討

  5. 報道対策:一般人の薬物事件は実名報道されないことが多いですが、公務員・教員・芸能人・スポーツ選手は実名報道のリスクが高い。弁護士と相談して対応方針を決める

やってはいけないこと

  • 被疑者に「逃げろ」と指示する(逃走幇助になる可能性)
  • 証拠の隠滅(証拠隠滅罪になる可能性)
  • 警察の捜索を妨害する
  • メディアへの不用意な接触

判例・裁判例

東京地判令和5年(覚醒剤所持・初犯・執行猶予)

【事件の概要】 被告人は30代会社員。過去に薬物関係の前科はなく、覚醒剤を自己使用目的で所持していたとして覚醒剤取締法違反(所持)で起訴された。所持量は1グラム未満(自己使用分)。逮捕後から反省の態度が明確で、家族(配偶者)の支援もあった。

【弁護活動の概要】 弁護士は公判前から精神科クリニックへの通院を開始させ、診断書を証拠提出した。また、DARCへの通所実績(5回)も証拠とした。配偶者を情状証人として出廷させ、「監督・支援する意思がある」旨の証言を得た。

【判決内容】 懲役1年6ヶ月、執行猶予3年。裁判所は「初犯であり少量であること、逮捕後から治療に積極的に取り組んでいること、家族の支援体制が整っていることを評価し、社会内での更生が相当」と判断した。

【ポイント】 早期の治療開始と家族の支援体制が執行猶予獲得の決め手になった事例。初犯・少量・自己使用では執行猶予獲得が現実的であることを示す。

大阪地判令和4年(大麻密輸・実刑)

【事件の概要】 被告人は20代男性。海外から国際郵便で大麻を密輸入した(重量:約500グラム)として大麻取締法違反(輸入)で起訴された。被告人は「知人に頼まれて受け取っただけ」と弁解したが、通信記録から密輸に積極的に関与していたことが認められた。

【判決内容】 懲役3年(実刑)。裁判所は「密輸量が大量であり、単なる受け取りとは言えない積極的な関与があった。営利目的が推認される」として実刑を選択した。

【ポイント】 大量密輸は初犯でも実刑になりうることを示す事例。「知人に頼まれた」という弁解は、通信記録等の客観証拠で崩れる場合がある。密輸・密売への関与は厳しく評価される。

横浜地判令和3年(覚醒剤・再犯・実刑と治療命令)

【事件の概要】 被告人は40代男性。覚醒剤使用で1度執行猶予判決を受けた後、猶予期間が明けてから2年後に再び覚醒剤を所持・使用したとして起訴された。今回は覚醒剤3グラム(自己使用量を超える量)を所持していた。

【弁護活動の概要】 弁護士は、被告人が「薬物依存症という疾病であり、適切な治療なしには断薬が困難な状態である」という精神科医の診断書を提出した。また、DARC入所の意思があることを示し、刑事施設内での薬物依存回復プログラム(DRP)への参加を求めた。

【判決内容】 懲役2年6ヶ月(実刑)。ただし裁判所は「医療的な側面を考慮し、刑事施設内での薬物依存回復支援プログラムへの参加を刑務所に推奨する」旨を付記した。

【ポイント】 再犯(執行猶予中ではない再犯)でも、弁護活動によって量刑が適正な範囲に収まり、刑務所内での治療プログラム参加につながった事例。「疾病としての依存症」という観点からの弁護が一定の評価を受けた。

よくある質問(FAQ)

Q1. 薬物事件は逮捕されたら必ず起訴されるのですか?

薬物事件は証拠(尿検査・押収物)が明確なため、起訴率が非常に高い事件です。ただし、初犯・少量・自己使用の場合、特に軽微なケースでは起訴猶予(不起訴処分)になることが全くないわけではありません。弁護士が検察官に対して積極的な働きかけを行うことで、不起訴の可能性を追求します。

Q2. 大麻は他の薬物より軽いですか?

大麻の罰則は覚醒剤より軽い傾向がありますが、令和5年改正で使用罪が新設され、尿検査で陽性反応が出た場合も処罰対象になりました。「大麻は軽い」という認識は危険で、初犯でも懲役・執行猶予の刑事処分を受けます。

Q3. 尿検査を拒否できますか?

任意の採尿は拒否できます。ただし、逮捕後の強制採尿は裁判所の令状(鑑定処分許可状)に基づいて行われる場合があり、拒否できません。任意採尿の場合も、弁護士が来る前に任意採尿を求められたら、「弁護士に相談してから答える」と伝えることが望ましいです。

Q4. 執行猶予になれば前科はつきますか?

執行猶予付き判決は「有罪判決」です。懲役○年、執行猶予○年という判決が確定すれば、前科記録に残ります。ただし、執行猶予期間を満了(再犯なし)した場合、刑の効力が失われます(刑法27条)。満了後は採用等への影響が薄れます。

Q5. 「持っているのを知らなかった」は通用しますか?

薬物所持罪は「故意(知情所持)」が必要です。「知らなかった」という主張が認められれば無罪になります。ただし、客観的に薬物が自分の支配下(荷物・自動車・自宅等)にあった場合、「知らなかった」という主張を認めてもらうのは非常に困難です。具体的な事情(誰かに預けられた等)について弁護士と詳細に検討する必要があります。

Q6. DARCやNAに参加していれば必ず執行猶予になりますか?

参加実績が評価されますが、それだけで執行猶予が保証されるわけではありません。量・営利目的・前科の有無・反省の態度など、総合的な判断になります。ただし、治療実績は初犯の軽微な事案では非常に強力な軽減要素になります。

Q7. 薬物事件で弁護士はどんなことをしてくれますか?

逮捕直後の接見・黙秘・取り調べ対応指導から始まり、証拠の精査(尿検査・押収物の適法性確認)、保釈申請、依存症治療機関の選定と連携、反省文・更生計画書の作成、情状証人(家族)の準備、公判での情状立証・量刑弁論まで全面的に対応します。

Q8. 薬物事件に強い弁護士の選び方を教えてください。

刑事事件全般の経験があり、特に薬物事件の取扱い経験が豊富な弁護士を選びましょう。確認ポイントは「薬物事件の受任経験が多いか」「依存症治療機関との連携経験があるか」「逮捕直後から素早く動けるか」「費用が明確か」の4点です。弁護士プロでは刑事事件専門の弁護士を検索できます。

まとめ

薬物事件は、証拠が客観的で示談という選択肢がない分、弁護の戦略が他の刑事事件と根本的に異なります。

  • 薬物の種類・行為態様によって適用法律と罰則が異なる
  • 令和5年改正で大麻使用罪が新設され、使用も処罰対象に
  • 尿検査と供述調書が最重要証拠
  • 初犯・少量・自己使用では執行猶予獲得が現実的
  • 執行猶予の鍵は依存症治療の開始家族のサポート体制
  • 営利目的・再犯は実刑がほぼ確実
  • 弁護士の早期選任と治療機関との連携が結果を左右する

薬物事件は、逮捕後の対応次第で人生が大きく変わる事件です。

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薬物事件の弁護は、刑事事件の中でも特に専門性が求められます。「依存症の医療的側面を理解している」「治療機関との連携経験がある」「情状立証の実績が豊富」——こういった要件を満たす弁護士を早期に選任することが、執行猶予獲得の第一歩です。

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