交通事故で怪我を負ったとき、治療費以外に被害者へ支払われる代表的な損害項目が「慰謝料」です。

しかし、慰謝料には3つの算定基準があり、どの基準を使うかで受領額が2〜3倍も変わるという事実は、被害者の方にあまり知られていません。

この記事では、交通事故の慰謝料相場を通院期間・入院期間・後遺障害等級別に詳細解説します。赤い本2024年版・自賠責保険令和2年改正後の基準に基づく最新情報です。

交通事故の慰謝料には3種類ある

「慰謝料」と一口に言っても、交通事故で被害者に支払われる慰謝料は3種類に分類されます。

1. 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

事故による怪我の治療のために入院・通院した精神的苦痛に対する慰謝料です。最も一般的な慰謝料で、ほぼすべての人身事故で発生します。

2. 後遺障害慰謝料

症状固定後も後遺症が残り、後遺障害等級認定を受けた場合に支払われる慰謝料です。等級により110万円〜2,800万円と大きな幅があります。

3. 死亡慰謝料

被害者が死亡した場合に、被害者本人および遺族に支払われる慰謝料です。立場により2,000万円〜2,800万円が相場です。

慰謝料の3つの算定基準

自賠責基準(最低保証)

自動車損害賠償保障法施行令で定められた支払基準です。すべての車両の所有者に加入が義務付けられている自賠責保険から支払われ、3基準のなかで最も低額です。

入通院慰謝料は 1日4,300円(令和2年4月以降の事故)。傷害分の上限は被害者1人あたり120万円です。

任意保険基準

各任意保険会社が独自に設定する社内基準です。マニュアルは非公開のため正確な金額は外部から見えませんが、自賠責基準とほぼ同等または若干高い水準にとどまります。

弁護士基準(裁判基準)

「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)に掲載された、裁判で認められる金額です。3基準で最も高額で、自賠責基準の1.5〜3倍になることが一般的です。

弁護士基準は、被害者本人や代理人弁護士が交渉で主張する根拠となります。保険会社が自発的に弁護士基準を提示することは絶対にありません。

入通院慰謝料の相場(弁護士基準・別表I/II)

赤い本では、怪我の重さで入通院慰謝料の算定表を使い分けます。

  • 別表I(重傷用): 骨折・脱臼・他覚所見のある外傷
  • 別表II(軽傷用): むちうち・打撲など他覚所見が乏しい軽症

別表I(重傷)入通院慰謝料 早見表

通院月数別(入院なしの場合)の慰謝料相場です。単位は万円。

通院月数 入通院慰謝料
1ヶ月 28万円
2ヶ月 52万円
3ヶ月 73万円
4ヶ月 90万円
5ヶ月 105万円
6ヶ月 116万円
7ヶ月 124万円
8ヶ月 132万円
9ヶ月 139万円
10ヶ月 145万円
12ヶ月 154万円
15ヶ月 164万円

入院期間がある場合は通院月数の表に上乗せされます。たとえば入院2ヶ月+通院4ヶ月(重傷)なら166万円が相場です。

別表II(軽傷・むちうち)入通院慰謝料 早見表

通院月数 入通院慰謝料
1ヶ月 19万円
2ヶ月 36万円
3ヶ月 53万円
4ヶ月 67万円
5ヶ月 79万円
6ヶ月 89万円
7ヶ月 97万円
8ヶ月 103万円
9ヶ月 109万円
10ヶ月 113万円
12ヶ月 119万円
15ヶ月 122万円

自賠責基準の入通院慰謝料

自賠責基準では、以下のうちいずれか短い日数に4,300円を掛けて算定します。

治療期間の総日数 vs 実通院日数 × 2

例: 治療期間180日/実通院日数60日の場合、min(180, 60×2) = 120日 → 4,300円 × 120 = 51万6,000円

自賠責の傷害分は被害者1人あたり120万円が上限なので、長期入院・長期通院でも上限額を超えることはありません。

通院期間別 弁護士基準と自賠責基準の比較

代表的なパターンで両基準を比較します。

むちうち・通院3ヶ月(実通院30日/治療90日)

  • 自賠責基準: 4,300 × 60 = 25.8万円
  • 弁護士基準(別表II): 53万円
  • 差額: 約27万円(約2倍)

むちうち・通院6ヶ月(実通院60日/治療180日)

  • 自賠責基準: 4,300 × 120 = 51.6万円
  • 弁護士基準(別表II): 89万円
  • 差額: 約37万円(約1.7倍)

骨折・通院6ヶ月+入院1ヶ月(実通院80日/治療210日)

  • 自賠責基準: 4,300 × 160 = 68.8万円(上限120万円以内)
  • 弁護士基準(別表I): 入1+通6 = 141万円
  • 差額: 約72万円(約2倍)

重傷・入院3ヶ月+通院6ヶ月

  • 自賠責基準: 上限の 120万円(治療費等込みで上限到達)
  • 弁護士基準(別表I): 218万円
  • 差額: 約98万円

通院期間が長くなるほど、弁護士基準と自賠責基準の差額は拡大します。自賠責基準は120万円で頭打ちになるのに対し、弁護士基準には上限がないためです。

後遺障害慰謝料の相場

症状固定後に後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が支払われます。

後遺障害等級別の慰謝料相場

等級 弁護士基準 自賠責基準 差額
1級 2,800万円 1,150万円 +1,650万円
2級 2,370万円 998万円 +1,372万円
3級 1,990万円 861万円 +1,129万円
4級 1,670万円 737万円 +933万円
5級 1,400万円 618万円 +782万円
6級 1,180万円 512万円 +668万円
7級 1,000万円 419万円 +581万円
8級 830万円 331万円 +499万円
9級 690万円 249万円 +441万円
10級 550万円 190万円 +360万円
11級 420万円 136万円 +284万円
12級 290万円 94万円 +196万円
13級 180万円 57万円 +123万円
14級 110万円 32万円 +78万円

後遺障害慰謝料の重要性

後遺障害慰謝料は等級1つの違いで数百万円〜千万円単位で金額が変わります。たとえば、むちうちで14級9号が認定されるか「非該当」になるかで110万円の差が生まれます。

このため、後遺障害等級認定の手続きを適切に進めることが、慰謝料を最大化する鍵となります。

死亡慰謝料の相場

被害者が死亡した場合の慰謝料相場(弁護士基準)です。

立場 死亡慰謝料
一家の支柱 2,800万円
母親・配偶者 2,500万円
その他(独身・子ども・高齢者) 2,000〜2,500万円

これに加えて、遺族固有の慰謝料が認められるケースもあります。

慰謝料を増額するための3つのポイント

① 弁護士基準での交渉に持ち込む

最大の増額要因は弁護士基準での示談交渉です。被害者本人が弁護士基準を主張しても保険会社は応じません。弁護士の介入が金額差の主因となります。

② 通院日数を適切に確保する

別表I/IIの慰謝料は通院月数で算定されますが、自賠責基準の計算にも影響します。月10日程度の通院を継続すれば、慰謝料算定で不利になりません。

③ 後遺障害等級認定を確実に取る

通院記録の積み上げ、症状固定時期の判断、後遺障害診断書の記載内容、被害者請求の選択──これらすべてが等級認定に影響します。等級1つの違いで賠償額が数百万円変わるため、早期から弁護士と医師の連携が不可欠です。

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通院月数・入院月数・実通院日数・後遺障害等級・年収・年齢を入力すると、自賠責基準と弁護士基準それぞれの慰謝料・逸失利益・差額を即座に算出できます。

まとめ

交通事故の慰謝料相場を整理します。

  • 慰謝料には入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類
  • 算定基準は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つで、弁護士基準が最も高額
  • 通院6ヶ月(むちうち)で 自賠責51万円 vs 弁護士89万円の差
  • 後遺障害認定があれば等級1つで数百万円〜千万円の差が発生
  • 弁護士基準を勝ち取るには弁護士の介入が事実上必須

保険会社から提示された慰謝料に少しでも疑問があれば、示談書に署名する前に必ず弁護士にご相談ください。