遺言書をどう書けばいいか分からない」「書いたつもりが無効と言われたらどうしよう」——遺言書はたった1つの書き方ミスで全体が無効となり、家族間の深刻な相続争いを引き起こします。

この記事では、自筆証書遺言の書き方を15のひな形・文例で網羅的に解説します。財産別(不動産・預貯金・株式・生命保険)の記載例、2024年から運用拡大した法務局保管制度、無効になる失敗パターン、付言事項の活用までを2026年最新法に基づき完全網羅します。

最後まで読めば、ご自身の家族構成・財産構成にピッタリ合う遺言書を、今日から書き始められるようになります。

遺言書の書き方ガイド アイキャッチ

遺言書の3種類と書き方の選び方

遺言書3種類の比較

遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。書き方の難易度・費用・効力が異なるため、まず種類を選ぶ必要があります。

3種類の違いを一覧で比較

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 全文自筆+押印 公証人が作成 自筆/PC+公証
証人 不要 2名必要 2名必要
費用 0円〜3,900円 数万〜十数万円 11,000円
保管 自宅or法務局 公証役場 自宅
検認 必要(法務局保管除く) 不要 必要
紛失リスク あり なし あり
内容秘密 完全 公証人・証人に開示 完全
偽造リスク あり なし
利用比率 約3割 約7割 約1%

結論: 多くの方は「自筆証書遺言+法務局保管」が最適

費用を抑えつつ法的安全性を確保できる組み合わせ。形式不備のチェックも法務局がしてくれるため、初めての遺言書作成でも安心です。

自筆証書遺言+法務局保管が向く人

  • 財産総額3,000万円以下
  • 相続関係がシンプル(配偶者と子のみ等)
  • 遺留分への配慮が完了している
  • 公正証書の費用を節約したい

公正証書遺言が向く人

  • 財産総額5,000万円以上
  • 複雑な家族関係(再婚・前妻の子・養子等)
  • 事業承継で会社株式を譲渡
  • 遺留分侵害額請求が予想される
  • 認知症の進行が懸念される(公証人立会で能力確認)

秘密証書遺言は実務上ほぼ使われない

秘密証書は「内容を秘密にしつつ存在を公証する」制度ですが、自筆証書(法務局保管)または公正証書で十分であり、年間利用件数も100件未満。本記事では取り上げません。

自筆証書遺言の書き方:5つの絶対要件

自筆証書遺言5要件

自筆証書遺言は民法968条で定められた5つの絶対要件を全て満たす必要があります。1つでも欠けると遺言書全体が無効となります。

要件1: 全文を自筆で書く

ルール

  • 本人の手書きでなくてはならない
  • ワープロ・パソコンでの作成は不可
  • 代理人による代筆は不可
  • 録音・録画も不可

例外: 財産目録のみPC・コピー可(2019年改正)

別紙の財産目録は、パソコン・コピーでも作成可能。ただし毎ページに自筆署名+押印が必要。

失敗例

「字が汚いから」とワープロで作成 → 無効

要件2: 日付を正確に記載

ルール

  • 「令和7年5月5日」のように年月日を特定可能な記載
  • 「令和7年5月吉日」「2026年春」等の不特定記載は無効

失敗例

  • 「令和7年5月吉日」 → 日付不特定で無効(最判昭54.5.31)
  • 「令和7年5月」のみ → 無効
  • 「私の80歳の誕生日」 → 本人の生年月日と照合可能なら有効(最判平成元年5月17日)

要件3: 氏名を自書

戸籍上の氏名を自書雅号・愛称・芸名でも本人特定可能なら有効だが、戸籍名が最も安全

要件4: 押印

印鑑の種類

  • 実印が最も望ましい(後の争いを防止)
  • 認印・拇印でも法的には有効
  • スタンプ印(シャチハタ)は避けるべき(経年で消失)

押印の位置

  • 本文の末尾、氏名の横
  • 複数枚の場合は全ページに契印

要件5: 加除訂正の方式

加除訂正の正しい方法(民法968条3項)

  1. 変更箇所に二重線を引く
  2. 訂正箇所に押印
  3. 欄外に変更内容を付記(「〇行目〇字削除〇字追加」等)
  4. 付記の末尾に署名

失敗例

「修正テープで消して書き直した」 → その箇所が無効

要件チェックリスト(コピペ可)

□ 全文を自筆で書いた
□ 日付を「令和○年○月○日」と特定して記載
□ 氏名を自書した
□ 押印した(できれば実印)
□ 訂正は二重線+押印+欄外注記+署名
□ 複数枚なら全ページに契印
□ 財産目録(PC可)にも各ページ署名押印

自筆証書遺言の文例15パターン

実際に使える文例15パターンを、家族構成・財産構成別に網羅します。コピペ+編集で即使用可能な形式です。

文例1: 配偶者に全財産を相続させる(最シンプル)

遺言書

遺言者 山田太郎は、次の通り遺言する。

第1条 遺言者は、その所有する全ての財産を、妻 山田花子(昭和35年5月5日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として妻 山田花子を指定する。

令和7年5月5日

東京都〇〇区〇〇1-2-3
遺言者 山田太郎  ㊞

文例2: 配偶者と子で具体的に分ける

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の不動産を、妻 山田花子に相続させる。

第2条 遺言者は、別紙財産目録第2記載の預貯金を、長男 山田一郎(昭和55年7月7日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、別紙財産目録第3記載の株式を、長女 山田二子(昭和58年9月9日生)に相続させる。

文例3: 子供がいない夫婦(兄弟姉妹に相続させたくない)

第1条 遺言者は、その所有する全ての財産を、妻 山田花子(昭和35年5月5日生)に相続させる。

(付言事項)
私には子供がいません。法律上は妻と兄弟が共同相続人となりますが、私の財産は全て妻に渡したいと願っています。兄弟・甥姪には**遺留分はありません**ので、本遺言で全て妻に渡る形となります。

兄弟姉妹には遺留分がないため、この遺言で確実に妻が全財産を取得できます。

文例4: 全財産を1人の子に集中(事業承継)

第1条 遺言者は、その所有する全ての財産を、長男 山田一郎(昭和55年7月7日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、長女 山田二子(昭和58年9月9日生)の遺留分に配慮し、現金1,000万円を相続させる。

(付言事項)
長男には事業を引き継いでもらうため、自宅と会社株式を集中させます。長女への配慮として現金1,000万円を相続させますが、これは長女の遺留分に相当します。

文例5: 相続人以外(孫・第三者)への遺贈

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の現金300万円を、孫 山田三郎(平成20年3月3日生)に遺贈する。

第2条 遺言者は、別紙財産目録第2記載の腕時計(オメガ・スピードマスター)を、友人 田中太郎(昭和40年6月6日生)に遺贈する。

相続人ではない人への財産移転は「遺贈」と表記。

文例6: 認知(婚外子の認知)

第1条 遺言者は、〇〇市〇〇町1-2-3 鈴木花子(昭和60年4月4日生)の長男 鈴木三郎(平成5年8月8日生)を認知する。

第2条 認知された鈴木三郎には、別紙財産目録第3記載の現金500万円を遺贈する。

文例7: 寄付(公益団体・大学等)

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の現金1,000万円を、公益財団法人〇〇基金に遺贈する。

第2条 上記遺贈は、〇〇基金の理念に基づく事業のために使用してもらいたい。

文例8: 遺言執行者の指定

第1条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、下記の者を指定する。

弁護士 鈴木次郎
〇〇法律事務所
東京都〇〇区〇〇4-5-6

第2条 遺言執行者は、預貯金の解約・払戻し、不動産の登記移転、有価証券の名義書換等、本遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。

文例9: 内縁配偶者・事実婚パートナーへの遺贈

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の不動産(自宅マンション)を、長年の内縁配偶者 田中花子(昭和40年5月5日生)に遺贈する。

(付言事項)
田中花子と私は、戸籍上の婚姻関係こそありませんが、20年以上にわたり夫婦同様の生活を共にしてきました。私の死後、彼女が住む場所を失わないよう、自宅を遺贈します。家族にはこの意思を尊重してもらいたく願います。

内縁配偶者は法定相続人ではないため遺贈となります。

文例10: 連れ子への相続(再婚家庭)

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の預貯金を、妻 山田花子(昭和38年6月6日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、別紙財産目録第2記載の現金300万円を、妻の連れ子 田中健一(平成2年4月4日生)に遺贈する。

連れ子は法定相続人ではないため遺贈を活用。

文例11: ペットへの配慮(負担付遺贈)

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の現金200万円を、長女 山田二子に遺贈する。

第2条 長女 山田二子は、上記遺贈の負担として、遺言者の飼い犬「ハチ」(柴犬・2020年生まれ)を、その自然な寿命を全うするまで愛情を持って飼育するものとする。

負担付遺贈でペットの将来を確保

文例12: 不動産の代償分割(共有を避ける)

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の不動産(自宅)を、長男 山田一郎に相続させる。

第2条 長男 山田一郎は、上記不動産取得の代償として、長女 山田二子に対し、遺言者の死亡後6ヶ月以内に金1,500万円を支払うものとする。

代償分割で自宅の共有を回避

文例13: 予備的遺言(受遺者死亡時の対応)

第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の不動産を、長男 山田一郎に相続させる。

第2条 万が一、遺言者の死亡前または同時に長男 山田一郎が死亡している場合、第1条に定める不動産を長男の子(遺言者の孫)山田四郎に代襲相続させる。

文例14: 廃除(虐待した相続人を排除)

第1条 遺言者は、長男 山田一郎を相続人から廃除する。

第2条 廃除の理由は、長男が遺言者に対し、令和5年〇月から継続的に身体的・精神的虐待を加えてきたためである。具体的には〇〇病院での診断書(令和5年〇月〇日付)の通り、長男の暴力により全治2ヶ月の傷害を負った事実がある。

廃除は重大な手続きで、家庭裁判所の審判が必要。

文例15: 遺言信託(複雑な財産管理)

第1条 遺言者は、その所有する全ての財産を、〇〇信託銀行株式会社を受託者として信託する。

第2条 信託の目的は、未成年の長男 山田一郎(平成25年5月5日生)の養育・教育のためとし、長男が満25歳に達するまで毎月20万円を支払うものとする。

未成年者の長期的養育に信託を活用。

資産別の記載例

資産別の遺言書記載例

財産の種類により、特定方法・記載すべき情報が異なります。

不動産(土地・建物)

土地の記載例

所在: 東京都〇〇区〇〇町
地番: 1番2
地目: 宅地
地積: 150.50平方メートル

建物の記載例

所在: 東京都〇〇区〇〇町1番地2
家屋番号: 1番2
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階 80.50平方メートル / 2階 60.00平方メートル

必須資料

  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 固定資産評価証明書

マンション(区分所有建物)

一棟の建物の表示
所在: 東京都〇〇区〇〇町1番地2
建物の名称: 〇〇マンション

専有部分の建物の表示
家屋番号: 〇〇町1番2の101
建物の名称: 101
種類: 居宅
構造: 鉄筋コンクリート造1階建
床面積: 75.50平方メートル

敷地権の表示
土地の符号: 1
所在および地番: 東京都〇〇区〇〇町1番2
地目: 宅地
地積: 1,500平方メートル
敷地権の種類: 所有権
敷地権の割合: 1万分の755

預貯金

〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 口座番号 1234567
口座名義 山田太郎

注意点

口座を特定しない包括的記載(「〇〇銀行の全預金」等)も有効ですが、口座番号まで記載するのが安全。

株式(上場会社)

〇〇株式会社(東証プライム市場・証券コード〇〇〇〇)
株式数: 1,000株
保管: 〇〇証券株式会社 〇〇支店
口座番号: 12345678

株式(非上場会社・同族会社)

〇〇株式会社(本店所在地: 東京都〇〇区〇〇町3-3-3)
株式の種類: 普通株式
株式数: 500株(発行済株式総数1,000株中)

生命保険金

注意点

生命保険金は受取人指定済みなら遺言で再指定不要(受取人固有の財産)。

受取人を変更したい場合

第1条 遺言者は、〇〇生命保険株式会社の生命保険契約(証券番号〇〇〇〇)について、保険金受取人を妻 山田花子から長女 山田二子に変更する。

ただし保険会社への通知が必要なケースもあるため、生前変更が望ましい。

自動車

登録番号: 品川500あ1234
車名: トヨタ
型式: ABA-〇〇
車台番号: 〇〇〇〇〇〇〇〇

暗号資産(仮想通貨)

〇〇取引所(株式会社〇〇)の口座
ログインID: yamada_taro
保有銘柄: ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)

注意点

  • 取引所のID・パスワードは遺言書とは別で管理(遺言書は将来公開される可能性)
  • エンディングノート等に記載

借金(マイナスの財産)

借金は遺言で個別に「誰に承継させる」と指定できますが、債権者の同意なしには対外的に効力なし。借金の処理は遺言ではなく遺産分割協議+債権者交渉で行うのが原則。

公正証書遺言の書き方

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言は公証役場で公証人が作成する遺言書。形式不備の心配がなく、最も法的に強固。

作成の流れ

1. 公証役場への事前相談

最寄りの公証役場へ電話または訪問。事前相談は無料

2. 必要書類の準備

  • 遺言者の本人確認書類(運転免許証等)
  • 遺言者の印鑑証明書
  • 戸籍謄本(遺言者・相続人)
  • 不動産登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 預貯金通帳のコピー
  • 証人2名の本人確認書類

3. 証人2名の準備

証人になれない人

  • 未成年者
  • 推定相続人・受遺者・その配偶者および直系血族
  • 公証人の配偶者・四親等内の親族
  • 公証役場の関係者

証人を確保する方法

  • 友人・知人に依頼
  • 公証役場に紹介を依頼(手数料あり)
  • 弁護士・税理士事務所のスタッフ

4. 公証役場での作成日

公証人が遺言者の口述に基づき作成 → 遺言者・証人2名・公証人が署名・押印。

公正証書遺言の費用

財産額により公証人手数料が変動:

財産額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円
3億円以下 95,000円〜

複数の相続人への分配の場合、各人ごとに計算した手数料の合計となります。

例: 1億円の財産を妻5,000万円・長男3,000万円・長女2,000万円に分ける場合

  • 妻分: 29,000円
  • 長男分: 23,000円
  • 長女分: 23,000円
  • 合計手数料: 75,000円

別途、遺言加算(11,000円)正本・謄本作成料等の実費も発生。

公正証書遺言の有利な点(自筆証書との比較)

項目 自筆証書 公正証書
形式不備 あり得る なし
偽造リスク あり なし
保管 自己or法務局 公証役場(永年)
検認 必要 不要
認知症争い 起こりやすい 起こりにくい(公証人確認)
緊急時の作成 可能 公証役場に出向く必要

法務局保管制度の活用方法(2020年7月開始)

法務局保管制度の流れ

法務局保管制度は、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる新制度。

制度のメリット

1. 検認不要

通常、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要ですが、法務局保管なら検認不要。相続手続きが大幅に短縮。

2. 紛失・偽造リスクなし

法務局が保管・管理。家族が遺言書を見つけられない・隠す・改ざんするリスクが排除。

3. 形式チェック

法務局が形式要件をチェック。形式不備で無効になるリスクが大幅減。

4. 費用が安い

申請手数料3,900円のみ。公正証書の十分の一以下。

法務局保管の手続き

1. 遺言書の作成

自筆証書遺言を**A4用紙(指定様式)**で作成。

様式の要件

  • A4用紙
  • 縦置き・横書き
  • 余白上5mm・下20mm・左20mm・右5mm
  • ページ番号記載
  • 片面のみ印字
  • 各ページに署名

2. 申請書の作成

法務局HPで遺言書保管申請書をダウンロードして記入。

3. 法務局で予約

最寄りの法務局へ予約(電話またはウェブ)。

4. 来局・申請

本人が持参して申請。代理人による申請は不可(本人確認のため)。

5. 保管証の受領

申請完了後、遺言書保管証を受領。これが保管された証明書。

保管後の流れ

遺言者の生前

  • 遺言者本人がいつでも閲覧・撤回可能
  • 家族・第三者は閲覧不可

遺言者死亡後

相続人・受遺者が遺言書情報証明書を法務局で取得し、相続手続きに使用。

遺言書が無効になる失敗パターン10選

遺言書失敗パターン

実務でよく見る遺言書無効の失敗パターンを10個紹介します。同じ失敗を避けるためのチェックリストとしてご活用ください。

失敗1: 日付が不特定(最頻出)

「令和7年5月吉日」「2026年春」等。最高裁判例で無効と確定。

失敗2: パソコンで作成

「字が汚いから」とWordで作成 → 本文部分は無効。財産目録のみPC可。

失敗3: 押印漏れ

署名はあるが押印がない → 無効

失敗4: 加除訂正の方式違反

修正テープ・訂正印なしで二重線のみ等 → その箇所が無効

失敗5: 日付の記載なし

書いた日が分からない → 無効

失敗6: 共同遺言

夫婦連名で1通の遺言書 → 両者とも無効(民法975条)。

正しい方法

夫婦それぞれが別々の遺言書を作成。

失敗7: 認知症進行後の作成

判断能力が著しく低下した状態での遺言 → 遺言能力欠如で無効

対策

医師の診断書・公正証書の活用。

失敗8: 強迫・詐欺による作成

家族の強要で書かされた遺言 → 取消可能。

失敗9: 受遺者特定の曖昧

「孫に渡す」だけで孫が複数いる場合 → 特定不能で無効の可能性。

失敗10: 財産特定の曖昧

「車を長男に」だけで車が複数ある場合 → 特定不能。

遺留分への配慮と付言事項

遺留分配慮の必要性

遺言書を作成する際、遺留分への配慮を欠くと、相続後に遺留分侵害額請求で家族間紛争が発生します。

遺留分とは

兄弟姉妹を除く法定相続人に保障された最低限の相続分

相続人 全体の遺留分
配偶者・子のみ 1/2
親のみ 1/3
兄弟姉妹 なし

遺留分配慮の3つの方法

方法1: 遺留分相当額を確保して分配

各相続人の遺留分を計算し、最低限の取り分を確保。

方法2: 生命保険金の活用

生命保険金は原則、遺留分の対象外。受取人指定で特定の相続人に大きな金額を渡せる。

方法3: 付言事項で意思を伝える

法的効力はないが、家族へのメッセージで紛争を抑制。

付言事項の文例

(付言事項)
私は本遺言を作成するにあたり、長男に多くを残す形となりました。これは長男が長年にわたり私を介護し、家業を支えてくれたことへの感謝の気持ちです。長女・次男には現金で配分しますが、決して愛情の差ではありません。

家族には、この遺言の通りに分け、互いに争うことなく仲良く暮らしてほしいというのが私の最大の願いです。

付言事項は遺留分紛争を防ぐ強力なツールとして活用してください。

作成後の保管・検認・遺言執行

遺言書の保管と執行

遺言書は作成後の保管死亡後の執行まで考えて準備します。

保管方法の比較

方法 安全性 費用 おすすめ度
自宅保管 低(紛失・隠匿リスク) 0円
銀行貸金庫 月額1,000〜3,000円
弁護士預かり 中〜高 数万円/年
法務局保管 3,900円
公正証書(公証役場保管) 最高 数万〜十数万円

検認の手続き(自宅保管の自筆証書遺言)

検認の流れ

  1. 家庭裁判所への検認申立て
  2. 相続人全員に検認期日の通知
  3. 検認期日(家裁で遺言書を開封・確認)
  4. 検認済証明書の発行

検認の意味

「遺言書の存在と内容を確認する手続き」で、遺言書の有効性を判断するものではない

検認前の開封禁止

家庭裁判所外で開封すると5万円以下の過料(民法1004条)。

遺言執行者の役割

指定するメリット

  • 預貯金の解約・払戻し
  • 不動産の登記移転
  • 有価証券の名義書換
  • 相続人間の調整

指定がない場合

家庭裁判所への遺言執行者選任申立てが必要。

遺言執行者の候補

  • 弁護士(紛争予防に最適)
  • 税理士(税務処理に強い)
  • 信託銀行(手数料高めだが機関の信頼性)
  • 相続人の1人(コスト最安だが他相続人と対立リスク)

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺言書は何歳から書ける?

満15歳以上から作成可能(民法961条)。判断能力があれば年齢制限はなし。

Q2. 認知症の親に遺言書を書かせたい

判断能力がある時期であれば可能。ただし医師の診断書を併せて取得することで後の能力争いを防げます。

判断能力が著しく低下している場合、公正証書遺言で公証人が能力を確認しながら作成するのが安全。

Q3. 遺言書の内容は誰に知られる?

自筆証書(自宅保管)

家族には公開不要。死亡後に発見される。

自筆証書(法務局保管)

死亡まで遺言者本人のみ閲覧可。

公正証書

公証人・証人2名は内容を知る。

Q4. 遺言書を変更したい場合

新しい遺言書を作成すれば自動的に旧遺言書を撤回(民法1023条)。

または、旧遺言書を破棄で撤回(民法1024条)。

Q5. 遺言書と異なる遺産分割は可能?

相続人全員+受遺者の合意があれば、遺言と異なる分割協議も可能(最判平成3年4月19日)。

Q6. 自筆証書遺言の費用はいくら?

  • 自宅保管: 0円
  • 法務局保管: 3,900円

Q7. 遺言執行者を弁護士に依頼する費用は?

  • 着手金: 30〜50万円
  • 成功報酬: 遺産総額の1〜3%

Q8. 認知症発症後でも遺言書は書ける?

意識清明な瞬間があれば可能ですが、リスクが高い。公正証書+医師同行が望ましい。

Q9. 遺言書を破棄したらどうなる?

遺言の撤回として効力消滅(民法1024条)。

Q10. 海外居住者でも日本式遺言書は有効?

日本国籍を保有する限り、日本の遺言ルールで作成可能。日本国内に財産がある場合、日本の遺言書を併用するのが安全。

Q11. 遺言書がない場合はどうなる?

法定相続人による遺産分割協議が必要。協議がまとまらないと遺産分割調停・審判へ。

Q12. 公正証書遺言と自筆証書、どちらが争われやすい?

自筆証書のほうが争われやすい。形式不備・能力争い・偽造主張が起こりやすい。

公正証書は公証人の確認があるため、争いが起こりにくい。

Q13. 遺言書は法的に何年有効?

期限なし。作成後30年経っても有効。ただし新しい遺言書で撤回されない限り。

Q14. 遺言書のサンプル・ひな形はどこで入手できる?

  • 法務局HP: 法務局保管用の様式
  • 公証人連合会HP: 公正証書遺言の例
  • 本記事: 文例15パターン

Q15. 遺言書作成は弁護士に依頼すべき?

自分で作成OKなケース

  • 家族関係シンプル
  • 財産3,000万円以下
  • 相続人全員と良好な関係
  • 法務局保管制度を利用

弁護士依頼推奨ケース

  • 財産5,000万円以上
  • 再婚・前妻の子・養子等の複雑な家族関係
  • 事業承継
  • 遺留分争い予想
  • 認知症進行中

まとめ:遺言書作成の重要ポイント

遺言書の書き方の最重要ポイントを整理します:

  • 遺言書は自筆証書(法務局保管)or 公正証書の二択
  • 自筆証書の**5要件(自筆・日付・氏名・押印・訂正方式)**を絶対遵守
  • 15のひな形・文例から自分に合うパターンを選択
  • 不動産・預貯金・株式は特定情報を漏れなく記載
  • 2020年から運用の法務局保管制度で検認不要・紛失なし・3,900円
  • 遺留分配慮+付言事項で家族紛争を予防
  • 複雑なケースは公正証書遺言で公証人の確認を経る

遺言書はたった1つの書き方ミスで全体が無効となります。形式不備で家族に迷惑をかけないために、迷ったら公正証書遺言または法務局保管制度を選ぶのが賢明です。

ご自身の家族構成・財産構成に最適な遺言書作成は、相続の専門家の助言があるとより確実です。本記事の文例を参考に、まず下書きを作成し、不安があれば相続問題に強い弁護士検索から、お住まいの地域の弁護士にご相談ください。

関連記事